猫と眠る彼女

今週のお題「憧れの人」傍から見れば、そんなにガックリすることでもないのかも

知れない。しかし、失恋してしまった本人にとっては、生きるか死ぬかのレベルの

問題だった。失恋したのは、おれではなく、おれの憧れの人だった。彼女はさめざめ

と声も無く涙を流し続けた。おれは言葉も無く見守っていた。

 

いつしか彼女は泣き疲れて眠りにつき、彼女の猫が彼女の足元に丸くなった。

 

おれは自分の部屋に引き返そうとしていた。おれが住んでいる学生用ワンルームマン

ションは門限があり、その時刻も迫っていた。泣いている彼女を見たとき、自分には

何もしてやれないもどかしさと、彼女の個人的な問題だからさしでがましいことは、

すまい、と言う思いが混ざり合って、正直おれは当惑していた。その当惑がもう、

40分以上も続いている。

 

おれは彼女に自分の体温を分け与えながら、そっと寄り添って寝ている彼女の猫が

羨ましかった。