もう随分、昔の事だ
今週のお題「憧れの人」おれはワルサーPPKを懐に、キンドレッド亭に乗り込ん
だ。「親父、メシをくれ」カウンターにつくなり、キンドレッドの背中に注文し、連
中の誰かが「様子見」に来るのを待っていた。しかし、誰も来ない。メシを食い終わ
り、更に30分も過ぎた頃、キャサリンが入って来た。「バーボン。私とこの人に」
おれは3杯目のバーボンを飲む事になった。
「来るわよ。10分くらいで」
「何人?」
「15人くらいね」
「多勢に・・ってところだな」
「逃げなさいよ」
「いや、今夜でケリをつける」
「あなたのワルサー何発撃てるの?15人よ」
「・・・」
「・・・」
「・・おれのワルサーより彼女が心配だ。無事なのか?」
「好きなのね?」
「無事か、と聞いたんだ」
「お姫様、無事よ。でも・・」
「でも?」
「ワルサーの王子様が、これじゃ・・ね」
「来たようだ。俺は裏の納屋に避難する」キンドレッドが、それだけ言い残して
店の裏口から出て行った。
正念場だ。