どう考えても

1人対15人じゃ勝ち目があるわけが無い。親玉は、ラムジーは出て来るだろうか。

それとも、屋敷の安楽椅子に踏ん反り返って部下の報告を待っているのか。

「ナーゼンコップ!聞こえるか?」

突然、男の声が外から響いた。

「聞こえる!」

おれは怒鳴り返した。

「うまい所に陣取ったな。こんな細長い店じゃ1人ずつ入っていくしかない」

「1人ずつ入って来い」

「俺達も死人は出したくない。一丁、取引といかないか?」

「どんな取引だ?」

「銃を持ってないやつを1人、そっちにやる。そいつに金の半分を渡してくれ。残り

は、お前さんのものだ」

「女たちはどうする?」

「キャシーは一時間前に出て行った。誰も止めないし、誰も後を追わない」

「エレーンは?」

「彼女はだめだ。その金がどういうものか、知りすぎてる」

「おれの条件を言う。聞く気はあるか?」

「聞こう」

「金は全部くれてやる。エレーンは解放して、この街から出て行かせる」

「この街からじゃなく、州の外ならそれでもいい」

「そいつはボスの判断か」

「いや、このビショップの判断だ」

「言質が欲しい。おまえさんのじゃなく、ラムジーのだ」

「その店から出て来る勇気があるのか?」

「ビショップ、銃無しで、お前1人でこの店の中に来い」

「それで、どうする?」

「ここの電話でラムジーに今の取引を伝えろ。終われば金を半分渡す」

「残りの金はいつ渡す?」

「エレーンと交換だ。場所と時間は、お前の用件が終った後、俺が電話でラムジー

に伝える」

・・・

これは賭けだった。ラムジーという男にとって金はどれほど大事なのか。贈収賄

汚い金の事を知った、経理事務の娘の命よりも、もっと大事だろうか。

・・・

ビショップが入って来た。余裕の笑みを浮かべていた。おれは、いきなり奴の顔を

殴った。ワルサーを左手に構えながら、右の拳で4発。

「手を頭の後ろで組んで、壁を向け」

おれは、ビショップの身体検査をして、丸腰である事を確かめた。