憧れの人に近づきたくて
今週のお題「憧れの人」「書けねえよう。書けねえよう」おれは別にこの先生に
憧れてこの出版社に就職したわけじゃない。内定取れたのがココと中堅のスーパー
マーケットだけだったからだ。まったく、大の大人が執筆を生業にしているくせに、
短編小説ひとつ満足に書けないから、と言って情けない。
「憧れ」の正反対だ。そこへ行くと、鬼段河原永世先生はカッコイイなあ。
ホントに憧れるなあ。おれも、大手出版社に就職できていたらなあ・・・
「出来たあ!!」
突然でかい声がして、担当の小説家が短編を書き終えやがった。おれは早速
中身に目を通して、礼を言い社へ戻ろうとしたとき、
「キミ、林檎あげるから持って行きなさい」
と小説家が、紙袋一杯の林檎をくれた。
「田舎からたくさん送って来てくれたんだ。洗ってあるから皮のまま食えるよ」
おれは、タクシーの中で林檎を食っていた。しかし、林檎を食えば食うほど
腹が減って来るじゃないか。とうとう、全部食ってしまうと、おれは
猛烈な空腹感、いや飢餓感を感じた。社に戻り原稿を渡すと近くの
喫茶店でカレーをお替りして、ふた皿も平らげてしまった。
食い終わったおれは林檎のことを考えていたが、わからなかった。
何故、林檎を食った途端、腹がへったのか・・・
「わかんないよう。わかんないよう」
おれは勉強の出来ない小学生のように泣き始めた。
そんな夢を見た。