これで、もう

今週のお題「憧れの人」 お別れと言う時になって傷痕が疼き始めた。エレーンは

プラットフォームへ向かおうとしていたが、引き返して、おれに何かを伝えようと

していたらしい。だが、おれは数日前の出血がひどかったために、その場に倒れて

意識を失ってしまった。

 

後で、キャサリンに聞いた。

「憧れの人ですって」

「誰が?」

「あなたよ。良かったわね」

「彼女は世間知らず過ぎるんだ」

「思い出を胸に旅立つのね」

「すぐに忘れるさ」

正直、忘れて欲しかった。彼女はもっと、日の当たるところで、生き生きとしている

べきなのだ。人には持ち分というものがある。