まあ、いろいろ
今週のお題「憧れの人」良かったじゃないですか。それが、おれと憧れの人が交わし
た最後の言葉だった。別に死別したわけじゃない。卒業式のあとの会話だ。憧れの人
は第一志望だった上智大学文学部を不合格になり、MARCHの文学部に進学するこ
とになっていた。
おれも東京の国立大学へ進学するので、会おうと思えば、口実をつくって会うことも
できる。実際、いろいろ良かった、と思っているのはこっちの方だった。
しかしその年の四月、彼女はその大学に入学しなかった。家族ごといなくなってし
まったのだ。何でも父親が横領か何かでつかまったらしい。世間体が悪くなり、母親
と妹と一緒に、三人で蒸発してしまったそうだ。
私立大学の授業料4年分は、経済的な負担だったのだろう。高校生の妹は、どこかの
定時制へと編入したのかもしれない。恐らく母親も働いているのだろうが・・・
こういうときは、国公立だったら、或いは彼女は・・・などと思ってしまうものだ。
それ以来ずっと彼女とは、会っていない。あのとき彼女と寝るべきだったのだろう
か。大人になってもわからない事はある。