また、夢落ちかよ!
今週のお題「憧れの人」誰かの怒鳴り声で目が覚めた。もうすっかり、昼だった。
日曜の午前11時半ころだ。
おれはスパゲッティを茹でる事ににした。即座に嫌な予感がした。彼女が電話を
かけて来る。しかし、おれは電話を全部処分していた。連絡は全部メールだ。
いや、ひとつだけプリペイド・フォンを持っているのだが、彼女はその番号を
知らない。番号を知っているのは銀行とクレジット会社くらいのものだ。友人
たちにも教えていない。連絡は全部メールの「変わり者」で通っている。これは
これでセイセイするものである。
スパゲッティを茹でているとき、そのプリペイド・フォンに女の声で電話があった。
クレジットの金利の低いローンがあるのでいかがですか、との事だ。特に借金を
してまで、買いたいものはないから、今はいいです、と答えておいた。
続けざまに電話があった。彼女からだった。
「何故この番号を知ってる?」
「そんなこと、どうでもいいじゃない」
「どうでも良くない」
「わたし、あなたに憧れていたわ。憧れの人の電話番号を一生懸命調べてようやく
見つけたのよ。そんなに変なことじゃないわよねえ?」
「世間じゃストーカーと言うんだ」
「一言だけ言わせて。あたし死ぬの」
「それで助けに来い、と?」
「憧れていたわ。本当に」
そう言って電話が切れた。
あの時、おれは彼女を助けに行くべきだったのだろうか。いや、やはり、そう
しなかったのが正解である。彼女は今もピンピンしている。おれは、着信拒否
の設定を毎晩チェックするクセがついた。世の中とは、そういうものだ。