自己言及的#8・・・黒いユーモア、或いは「毒」について
『プレイヤーピアノ』を実際に読めば、それぞれのキャラが自分の
ベストを尽くして、人生を生きていこうとする姿だけが描かれた
一種の「群像劇」と言うのがわかると思う。
「おまえは小説の中で悪人を書いた事がなかったな」と死ぬ間際の
父親が、ヴォネガットに言う場面が、『スローターハウス5』の中に
ある。この『プレイヤーピアノ』でも典型的な悪人は登場しない。
一つの国、一つの社会が歪な発展を遂げて、人間がスラップスティック
を演じる。泣くか笑うかしかない状況で、毒とともにユーモアを
示した作品。で、書評自体も「毒」を混ぜて書いてみた。エリートと
ノンエリートに二極分化した作品の世界と、現在の日本の姿が重なる
からである。
Amazon.co.jp: スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302): カート・ヴォネガット・ジュニア, 和田 誠, 伊藤典夫: 本