書評『人に強くなる極意』佐藤優

外務省のラスプーチンと言われた例の人物の本ですが、最近マスメディアへの

露出が多いので、多くを説明する必要もないでしょう。

 この本の構成は

 1.怒らない

2.びびらない

3.飾らない

4.侮らない

5.断らない

6.お金に振り回されない

7.あきらめない

8.先送りしない

と、こんな感じですが、今回はポイントだと思われる部分だけ論評します。

 

弟1章のp37に「よい物語で人生を疑似体験する」という部分があります。

感情のコントロール・トレーニングとして、出来るだけ多くの名作と言われて

いる小説を読み、人物に感情移入してみる。これが著者の言う「人生の擬似

体験」です。目的は先に書いたとおり、感情のコントロールの為なのですが、

この手法については、本書の他の章でも何度も出てきます。著者が外務省の

キャリア・エリートを始め身近な人物を観察していると、どうも、人間が

「道を誤る」もっと言えば「人生を失敗する」という目に合うのは、「感情に

振り回されてしまった」時であり、「怒り」の場合よりも、もっと恐いのは

「慢心・驕り」の場合のようです。第4章で「侮らない」とまるまる一章を

使っているのは、この「侮り」という感情が一番恐ろしく、その状態にある時、

本人は自分が思い上がって慢心している、と言うことが自覚できない。後に

なって大失敗をして始めて、自分はのぼせ上がっていたとわかるから非常に

恐るべき感情だ、とのことです。当時メディアに騒がれ有名だった鈴木宗男

国会議員の場合もその典型的な例で、著者は間近でそれを見ていたわけです。

 

個人的に昔から、人は何故ものがたりを書くのか、そして何故読むのか、そんな

事柄に割りと強い興味を持っていたのですが、ここにその答えのひとつがある、と

言えましょう。

 

「人生の疑似体験をすることで感情に振り回されないようになるため」

「感情に振り回されて人生を失敗する、と言う実体験を避けるため」

 

「有用性」を考えすぎている、余りにもプラグマティックな答えかもしれません。

しかし、「何の為」と言う目的がはっきりしている答えの方が自分には

合っていると思う方はにとっては一読の価値あり、と思います。

 

 

 他に何冊か貼り付けておきます。『資本論』関係について、今ちょっとした

トレンドのようです。若い金融関係者には・・(『知の武装』参照)