じゃまだから!
トピック「ベビーカー」について
みたいな事をいいながら、ベビーカー女子約二名が電車の中で格闘戦を始めました。
双方のベビーカーには、突端に衝角がついていました。おれは、眠かったので約半分
眠りながら、女子二名の戦闘を薄目を開けて見ていました。
片方の女子の手押し車には左右前方に二本の衝角が付いていて、もう片方のには
前方中央部に大き目の衝角が一本付いているだけで、他の部分は装甲になっていま
した。手押し車二台が激突しながら、徐々に徐々に、双方が双方を破壊していきまし
た。
最終的には何も残りませんでした。女子二名は両方ともハアハア言いながら
「ふん、あなたもやるわね」
「あなたも、なかなかのものだったわ」
「このあと、飲みにいかない?」
「いいわよ。うちのは今日もサービス残業だから」
女の友情が生まれた瞬間は、かくも美しいものなのか、と小学生のおれも、思わず感
動してしまいました。手押し車の残骸の中にあった肉片のようなものの事など、すっ
かり忘れてしまうくらいでした。
その時、若い男性が「よろしかったら」と、巨大な箒と塵取りを二人に渡しました。
「えー!わたしたちがやるのー?」
「当然です。社会のルールを守りましょう」
女子二人は渋々、掃除を始めました。その姿を見て、おれは同じクラスにいる通称
「ゴリラ女二人組」の事を思い出しました。
やはり、大人になっても公共心は大切なんだなあ、と考えながら、掃除をしている
女子二名を電車に残して、おれは目的地の駅で降りました。すれ違い様に新たなベ
ビーカー女子数名が電車に乗り込んで来ました。
おれたちの「日常」は戦闘と友情で出来ている、と小学生ながら人生を考えてしまう
一日でした。