「ゆるい就職」と佐藤優

トピック「ゆるい就職」について

と言うタイトルにしましたが、同時に書評記事でもあります。こちらですね。

 

本のタイトルがちょっと恐そうですが、そうでもないです。内容的には。

多分、出版編集サイドがつけたのかも・・・。中身はですねえ、

「修羅場にぶち当たったら、そんときゃ、どうするか」みたいな

「方法論」でもないですし、「技術論」でもないです。何なのか、

と言うと「読書ガイドブック」なんですよ。

 

で、取り上げられている本はと言いますと、

 

1.マキアベリ君主論

2.イエス・キリスト新約聖書

3.ドストエフスキー『カラマゾフの兄弟』他

4.アドルフ・ヒトラー『生き残りの思想』

5.ケルロイター『ナチスドイツ憲法論』

6.スノーデンについて・・・土屋大洋『情報による安全保障』他

7.内村剛介『生き急ぐ』他

8.宇野弘蔵資本論五十年』他

9.ボンヘッファー『抵抗と信従』他

10.安藤美冬『冒険に出よう』

11.ダン・ブラウンインフェルノ

付録.西原理恵子との対談

 

まあ、こんなところですが、一人の作家につき一冊ではないです。

作品論ではなく、作家論、そしてその作家の評伝なども出て来ますので

「人物論」になっている、と考えてください。

 

で、就活・就職の文脈で読むと一番、目に付くのは「ノマド」の人、

彼女ですねえ。安藤美冬自身の体験から学ぶと、「大きな転換点」は

 

①2004年、慶応法学部卒

②新卒で集英社に入社

③2007年、抑うつ症状のため、半年間休職

④その後、復職

⑤2011年、退職してフリーランス

 

③だと思います、私は。別の言葉で言うと「バーンナウト・シンドローム」、

いわゆる「燃え尽き症候群」だったのでしょう。それまで、大好きだった

仕事に、もう全然、情熱と言うものを抱けなくなる。で、復職してから、

退職まで、サラリーワーカーとして、4年くらい働いている。この4年間は

「燃え尽き」た人間でも働けるのか、と言うと、これが結構、働けるもの

なんですなあ。仕事っていうのは、技術や能力でやるものですから、その人間に

高度な仕事スキルがあって、クオリティの高い仕事が出来れば、その「結果の

部分」だけで評価されてしまう。だから「情熱的にがんばった」だの「一生懸命

努力した」だの、プロセスの部分なんて、割とどうでもいいんですよ。

20代後半くらい、だいたい27歳前後の人って仕事能力で評価されるし

この年齢くらいの人が転職して中途採用されると「即戦力」である事を求められる。

仕事の結果の質が高ければ良い、という見方をされるのです。で、新卒の

人は、自分には当てはまらないじゃないか、と思うかもしれませんが、

いつバーンナウトするか、わかりません。そういう時のために、仕事スキルと

仕事能力だけは、(極端かもしれませんが)日本でトップクラスのものを

身につけておくべきです。で、いわゆる「ノマド」の生き方の出来る人と

いうのは、限られていて、誰にも出来るわけではない。仕事の技能の点で

集英社のようなトップクラスの会社から、飛び出しても、一人でやって

いけるくらい、ハイスペックな人にだけ許された「特別な生き方」なのです。

自分は、そこまではムリ、と言う人には、「社畜」という道もあるのです。

若い方は、まだ自分の可能性の限界までいっていないかもしれませんが、

そういう人の前には「ノマド」と「社畜」の両方の道が用意されていると。

で、燃え尽きるくらい仕事に打ち込んで見て、初めて、「ノマド」か

社畜」か、どちらが自分の道なのか、がわかると言うことなのですよ。

・・何か、最後は「アオイホノオ」みたくなっちゃいましたけど。

ーーーーーーーーーー

「ゆるい就職」の部分がないじゃないか、と思う人もいるかもしれませんが、

「燃え尽き」たあと休職後、復職して、自分の技能だけで仕事する。で、

情熱は消え去っているので、ハイクオリティでありながら、「意識の上で」は

カタチだけ仕事をやっている。会社からは「人並み」にやっていると評価され

収入なども「人並み」。でも、本人の「意識の点で」はユルユル状態で仕事

を続けている。そんなところですか。熱くもなんともないですね。焔モユル

とかが、こんな社畜サラリーマンなどを見たら、激怒しそうです。