書評『プレイヤーピアノ』#4
書評の続きです。
で、「社会が間違っている」と思うのならば、何か行動を起こすのか起こさないのか
と言う問題になっていくのですが、600ページもあるのに、主人公はサクサク行動
しません。非常に優柔不断なのですが、コレはこういうキャラ設定なのです。(ギリ
シア神話から取られているらしい)このあと、ヴォネガットは、金持ちの自分は貧乏
な人たちのために何ができるのか、をテーマにした『ローズウォーターさん・・』を
書くのですが、一部では中2病の金持ちと言われているように、この人物も人生相談
をするだけで、思い切った変革をするということもない。
こういった問題は昔は社会主義・共産主義思想が扱ってきたのですが、戦後のアメリ
カでは、それ以外の解決を示さなければならない。というのが大きなジレンマでしょ
う。戦前のアメリカだったらもっと、ラクだったかもしれません。ヴォネガットは
1922年生まれなので、その時代を知っていますし、当時のアメリカ人の多くが
社会主義シンパだった事を作品やエッセイの中で取り上げています。行動はしない・
できない状態で苦しむ姿を描くのも、また、文学であり、行動して頓挫する場合
も、その姿を描き続けるのが、やはり、文学です。
書評終わります。