書評『プレイヤーピアノ』#3
書評のつづきです。
今度は「偏差値67」以上の勝ち組はどんな人生になるのか、と言うことですが
先ほど書いたように、エリート層として生きていきます。主人公はこちら側に
属していますが、当然金持ちで、日本で言うと年収2000万か3000万くらい
をイメージしてください。そんな暮らしぶりです。雰囲気のある気に入った家屋を
見つけたら、別荘に、とポーンと買っちゃうような感じです。で、舞台となる町を
一本の川が隔てているのですが、川のこちら側の高級住宅地に妻の「アニータさん」
と住んでいます。子供はいません。主人公は欲しいと思ってるのですが、アニータさ
んがこっそりと避妊ピルを飲んでいるからです。エリートの夫と二人きりで生活し
いつまでも若く美しくありたい、と。ちなみにアニータさんは高卒で唯一、川の
こちら側に住んでいる人間です。まあ、金持ちになる最も手っ取り早い方法は・・・
と、それを実践しちゃった「ちゃっかりさん」ですね。
で、主人公の同僚の中にも鼻持ちなら無いエリート主義者もいれば、「この社会は
何か間違っている」とこっそり考えている者もいる。前後しますが、この小説のなか
の大学は一般教養から博士課程まで、一貫教育をしています。一度大学に入ってしま
うと、卒業して博士号を授与される。(中には、50歳近くになって、大学の事務的
ミスのせいで博士号を取り消されてしまう人物も登場するのですが、まあ、読んで
みてください)
このエリートたちは、身分証に番号がつけられていて自分の専門分野では、全国で何
番目に優秀かが、記されている。で、自己紹介のときも、その専門分野の略称と番号
をお互いに、言うわけですよ。自分と相手の「格付け」がその場でできてしまうの
だから、日本人の名刺交換なんかよりも、もっとずっとシビアです。
#3はここまで。さらに続きます。