書評『時は乱れて』ディック

 書評です。

 前回と同じく最近読んだSFから。1950年代終り頃ですから

SFが必ずしも、サイエンスを扱う小説ではなくなって来た頃に

書かれた作品。当時は、スペキュレイティブ・フィクション

(思弁的小説)などという言葉も生まれました。サイエンス・

フィクションに対する造語ですね。時代背景を考えますと、

アメリカでテレビ放送が始まった頃で、同時にスプートニク

ショックのあった頃。冷戦も激しくなり、第三次大戦の恐怖を

感じながらも、物質文明を謳歌していた不思議な時代に書かれた

作品です。50年代前半には米ソの代理戦争だった朝鮮戦争があ

り、あのマッカーシズム赤狩りも行われていました。アメリカ

国民は共産主義を憎みながら、同時に右翼的な反共主義も憎んで

いた。不思議なアンビバレンツの状態に置かれていたわけです。

とりあえず、今回は時代背景について。

次回、ディックという作者について、そして作品について

レビューする予定です。