見学Ⅱ

今週のお題「運動会とスポーツの秋」

今年もおれは、運動会を見学しながら、のんびり秋の風に吹かれていた。本でも読み

たいところだが、運動会と言うのは一日中体育の授業だ、とか、そんな建前を散々聞

かされてこりゃ教師も学校もマジだな、と流石のおれも、連中を無用に怒らせるのは

得策じゃあない、みたいな事を考えながら、運動会の日を迎えた。

 

おれは、見学のフリをしながら、ラジオを聴くことにした。おれは、ストレス性の難

聴でいつも補聴器を使っていた。みんな、それを知っていたので、イヤホンを耳に

入れていても、誰も咎めようとはしなかった。忌野キヨシローの歌みたいな状態で

彼女ブルマ姿で100m走っていたときも、おれはクールなナンバーに合わせて、ス

イングしていた。その時、突然

 

「臨時ニュースです。本俵県熊里市で、人間が空から大量に降ってくると言う

珍事が起きました。気象庁では異常気象の一つと見て、調査を開始しましたが、

詳しい事は、分り次第お伝え致します。臨時ニュースでした・・・」

 

じゃあ、今日は熊里市では、人間の生け作り大会だなあ、等と考えていると、そこへ

ガンツ先生がやって来て、スケジュールが伸びてるので巻きで行く、お前は、もう

帰っていい、と言うじゃあないか。

 

ラッキー!おれは、ぴょんぴょん跳ねながら、水中の我が家に帰ろうとした。その時

おれの彼女の母親が、人間を少し余らせちゃったから、パック詰めにしたの持って

行って、と言って、おれに持たせてくれた。おれは、ありがとう、小母さん、と言っ

て、今日は好物の人間で晩飯が食えるな、と喜んで帰ろう、とした時、目が覚めた。

 

運動会当日、夜が明けたばかりだった。こんなに早く目が覚めるなんて・・・幾ら、

運動会を見学で済ますからって、昨日の晩飯で、人間を食いすぎたから、あんまり眠

れなかったんだ。あと、最近よく言われているが、人間を獲り過ぎてるので、もう、

絶滅から保護することも、考えなくちゃならないらしい。人間、腹いっぱい

食べられなくなりそうだ。それを考えると、運動会を嫌々見学するのよりも、もっと

憂鬱な気分になるぜ。