書評『プレイヤーピアノ』#2

書評の続きです。

 

この計画経済管理社会と言うのは「成功した社会主義国」そのものであり、その

意味では、まるで戦後日本が「社会実験」として実際にやってしまったかのよう

です。しかも、その戦後日本型システムは、半分壊れているようで、しぶとく

機能し続けている。たとえば、小説の中ではエリート階層とノンエリート階層

とに分けられているのですが、それを分けるのが18歳くらいで受験すること

になっている学力テストです。「一般分類国家試験」と呼ばれていますけれど。

 

どのくらい難しいかと言うと、たとえばある大学の工学部の学科では定員が27

名のところに、受験生が600人。600人中27番以内で合格になるのですが、

これは「偏差値67」くらいです。(標準偏差がわからなくても、上位何パーセント

かが分かれば偏差値も計算可能です。これが相対評価のいいところですね)で、

偏差値67未満くらいの高校生は、ハイスクール卒業後に次の三つの選択肢が

用意されている。

 

1.政府雇用で住宅の建築修繕等の仕事をする

2.政府雇用で道路の建造修繕等の仕事をする

3.軍隊

 

3の軍隊が本当に戦争をやるとしたら、現実のアメリカみたいですが、この作品の

世界では、おそらく第三次大戦のような大戦争を経験して、アメリカをはじめ地上に

存在する国は全部戦勝国であり、既に「敵国」というものがない。従って、小説の

中の軍隊は戦争をせずに災害救助等の仕事をしている。こんなふうに書くと、日本の

自衛隊みたいですが・・・

 

更に続きます。