書評『時は乱れて』ディック・・#3
書評の続き、『時は乱れて』の3回目です。ディックを既に何作か読んでいる
人にとっては、ワンパターンのような印象を与えるかも知れないのですが、
これが長編第一作なので、この『時が乱れて』をスタート地点にして、以降の
異世界テーマSFが、順次展開されていった、その後に独自の哲学系セカイ小説
へと続いていった、と考えた方が良いでしょう。
いつものパターンでごく普通の生活をする現代(50年代終り)アメリカ市民
たちが、主だった登場人物なのですが、「ストウ夫人の最新作『アンクルトム
の小屋』」、「マリリン・モンローの顔も名前も知らない人々」、「駐車場を
大きく横切っていく赤いタッカー」など、異化作用をもたらす要素が少しずつ
外挿されていく前半。「何かがおかしい」と読者も感じ始めるのと、同様、登場
人物たちも「この世界は何かがおかしい」と感じながら日常生活を続けていく。
だが、主人公と一緒に暮らす妹の息子が空き地の廃墟ビル地下室で
拾ってきた古雑誌には驚くべき「真実」が書かれていた・・・・・
つづきは、また次回。